マイホームを買う時に、固定金利と変動金利、どちらで借りた方が良いのでしょうか。
昔からある問いですが、色んなブログを読んでみても一般論が書かれているばかりで、イマイチ明確な回答がなされていません。
この記事では、一定の前提を置いて、明確な回答を導きたいと思います。
普通のサラリーマンは、変動金利で借りましょう。
前提条件
さて、前提条件です。
このブログの対象者は日系の大手サラリーマンとしています。ドーンと6,000万円の借入を行って頂くものとしましょう。
また、固定金利(フラット35)・変動金利ともに、記事執筆時点である20年12月の最安値としています。
さて、変動金利が35年間据え置きというのは非現実的ですので、5年毎に0.3%ずつ上がっていくものとします。
この金利上昇0.3%の妥当性については後述するとして、35年間の固定金利・変動金利を視覚的に表すと以下のようになります。
この時、固定金利・変動金利ともに、期間平均は1.31%となります。
さて、期間平均金利は同じですが、この前提の下では固定金利・変動金利のどちらが得になるでしょうか?
支払金利額の比較
35年間の支払い金利の累積額を表したものが以下になります。
ひと目でわかる通り、変動金利の方がかなり総支払額を抑えられることが分かります。
35年間の累積で400万円近くと、無視できない金額規模です。
期間平均金利が等しいはずなのに、なぜ総支払額に大きな差が生じるのでしょうか?
その理由は、元本にあります。
変動金利の場合、金利が上昇するのは借入期間の後半です。
金利が上がる借入れ後期には、元本の返済が進んでいるため、金利上昇のインパクトはそれほど大きくない、という訳です。
ちなみに、月々の金利込みの返済額は以下の通り。
変動金利の返済額は、金利上昇に伴って徐々に上がってはいきますが、返済期間のほとんどにおいて固定金利を下回ります。
なお、今回のシミュレーション上は前倒し返済を織り込んでいません。
実際には、固定金利との差額分を前倒し返済に充てたり、子供が独り立ちした後の数年間に集中的に前倒し返済をする人が多いことでしょう。
前倒し返済により借入期間後半の元本は更に減りますので、尚のこと変動金利の優位性は高まります。
金利上昇+0.3%の妥当性
さて、上述のシミュレーションでは、変動金利の金利上昇を5年毎に0.3%という前提を置きました。
そもそも、この前提は妥当なのでしょうか?
ここで、住宅支援機構が出している過去の金利推移を見てみましょう。
オレンジ色の線が、変動金利の推移です。
店頭金利と適用金利
先ほどの図の見方には、少し注意が必要です。
変動金利が足元で2.475%となっていますが、これは「店頭金利」と呼ばれるものです。
実際にお金を借りるときに適用される「適用金利」は、店頭金利から期間優遇金利を差し引いて計算されます。
さて、ここでもう一度シミュレーションに使った変動金利の推移を見てみましょう。
ここでいう変動金利は、「適用金利」を指します。
5年毎に0.3%ずつ増加するということは、35年後に2.21%の適用金利になるということ。
言い換えると、35年後に4.275%の店頭金利になるということです。
これは、バブル後期と同程度の水準です。
35年後の日本において、バブルの頃と同じ金利水準になっていると考える人は少数派でしょう。
ちなみに、固定金利と変動金利の返済総額が等しくなるのは5年毎に+0.46%ずつ金利が上昇したときです。
この時、35年後の適用金利は3.19%、店頭金利は5.255%。
ここまで世の中が劇的に変わって、ようやくトントンです。
「変動金利は今が最低水準だから、今のうちに固定にしておく方が良い。」
「変動金利は今が最安値で、将来上昇することは確実。」
「変動金利は将来CFが読めないので固定にしておく方が良い。」
固定金利派の方々が言うこれらの主張は、すべて無視して問題ないと考えます。
リスクが顕在化する可能性に対して、備えるためのコストが大きすぎます。
また、将来CFを織り込みたいなら、固定化するのではなく金利上昇幅を保守的に設計しておくだけで十分です。
ローン減税の影響は
さて、今回のシミュレーションでは、単純化のためにローン減税の効果を一切織り込んでいません。
簡単に結論だけ付記すると、以下の通りです。
- 現行のローン減税の場合、変動金利の優位性はさらに広がる
*元本が多い当初の10年(~13年)に渡って逆ざやが続くため
なお、最近のニュースでローン減税の抜本的な見直しが検討されているとの報道がなされています。
詳細はまだこれから検討されるようですが、制度改正により、控除額が例えば「元本の1%と実際の支払金利額のいずれか小さい方」などに変更になった場合はどうでしょうか?
こちらも結論だけ簡単に述べると、以下の通りです。
- 変動金利の優位性は減少するが、固定金利よりも優位であることは変わらない。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
「固定か変動か」という問いは、永遠のテーマかのように語られていますが、実際は迷う余地はほとんどないと思います。
つい最近、私も6,000万円程度の借入をしましたが、迷うことなく変動金利を選択しました。
この記事が、少しでも皆さまのお役に立てたなら幸いです。