生命保険に入ろうと思っているけれど、保険料をいくらに設定すればいいか分からない、という方も多いのではないでしょうか。
また、ほけんの窓口などでおすすめされるがままに保険料を設定してしまったという人も少なくないと思います。
当たり前ですが、保険を売る側の立場からは、できるだけ高い保険料を払わせようとしてきます。
我々は、百戦錬磨の保険会社に対抗できるだけの知識を身につけ、「本当に必要な保険料」を自分自身で見極めなければなりません。
この記事では、ライフプランの作成を通じて、保険料を決めていく「根本的な考え方」を説明したいと思います。
- 生命保険料は月5,000円程度で十分(4人家族の場合)
- 損害保険等すべて合わせても、1家庭あたり月7,000円程度で収まる
いつものことながら、記事の対象者は日系大手のサラリーマンを想定しています。
必要な保険は
詳しくは別の記事に書いていますが、必要な保険はたったの5つだけです。
突然ですが、「学資保険 必要」「がん保険 必要」「医療保険 必要」などのキーワードで検索していませんか?そこに出てくる検索結果は、大半が保険会社の記事です。つまり、保険を売る側の記事ですので、当然「必要である」というトーンで書かれて[…]
ライフプランでシミュレーションしよう
さて、そもそも保険とは「万が一の時に備えるもの」ですので、万が一が起きた時に足りなくなる分をカバーできれば十分です。
この不足額は、当然のことながら年齢や家族構成、資産の状況によって異なってきます。
この記事では、例として以下の家庭における保険の金額を考えていくことにします。
- 夫33歳、妻33歳、2人の子ども(2歳、0歳)
- 夫の収入で生活、妻は専業主婦
- 貯金500万円、投資運用1,000万円
万が一が発生した後の家計を把握できれば、おのずと必要な保険額が見えてきます。
ここで使える強力なツールがライフプランです。
この記事では、保険料を考えるためのライフプランの作り方を見ていきます。
なお、この記事で作るライフプランの完成形を置いておきますので、これを見ながら読んでいただくと、更に理解が深まると思います。
「ライフプランを作るのは面倒くさい」という方へ
ライフプランを一度作ると、お金周りの理解がぐっと深まります。
ところが、面倒くさがって作りたがらない人がほとんどではないでしょうか。
確かに、前提を調べたり家計を確認したりと、面倒なことが山積みです。
しかし、エクセルを少しいじったことがある人なら、1日あればライフプランなどあらかたできてしまいます。
それでも面倒がって作業をしない人に、少し数字を交えてお話をさせてください。
生命保険文化センターによると、1世帯当たりの平均保険料は月額3.2万円にも及ぶそうです。
きちんとライフプランを作成し、将来のお金の計画を立てれば、3.2万円もの保険がいかに過大であるかはすぐにわかります。
例えば4人家族だと、損害保険等もすべて合わせても、せいぜい月額0.7万円程度の保険に入っていれば十分過ぎるぐらいです。
ライフプランを作るのに、たった1日。
たった1日作業するだけで、月額2.5万円、1年で30万円もの保険料が削減できるわけです。
しかも、1年単発で終わる話ではなく、毎年30万円の削減が自動で継続されます。
加えて、浮いた30万円を、例えばS&P500などの積立投資に回して利回り5%で運用すれば、30年後には2,000万円になります。
たった1日の作業で、30年後の生活が劇的に変わると思えば、こんなにコスパのいい仕事は他にありません。
面倒であっても、たった1日で人生が変わると思って、腰を据えて取り組むことを心からお勧めします。
前置きが長くなりました。ライフプランの中身に移りましょう。
1.収入について
さて、まずは収入から見ていきましょう。
遺族の収入源は主に以下の4つです。
- 遺された配偶者の給与・ボーナス
- 公的保障(遺族基礎年金・遺族厚生年金・老齢基礎年金)
- 企業年金
- その他(子ども手当など)
順番に見ていきましょう。
① 遺された配偶者の給与・ボーナス
共働きの家庭であれば、ある程度の予測がつきやすい項目かと思います。
一方、片方が専業主ふの場合は、よく話し合う必要があります。
まずは、「世帯主が死亡した場合は、専業主ふも働かなければならない」ということを認識合わせしておきましょう。
断言しますが、日系サラリーマンである限り、遺族が一生働かなくて済むほどの財産は築けません。
世帯主の死亡後は、遺された配偶者に働いてもらわないと、家計は成り立ちません。
ここでは、いったん配偶者の手取り給与を20万円/月、ボーナスは0円(手取り年収240万円)としておきましょう。
「手取り10万円が現実的」ということであれば、足りない分は保険で追加で備える必要が出てきます。
逆に、手取り30万円が可能なのであれば、その分の保険料は削減できる、という具合に調整してください。
② 公的保障(遺族基礎年金・遺族厚生年金・老齢基礎年金)
こちらはすぐに具体額を確認できます。
お手元に「ねんきん定期便」を用意し、計算してみましょう。
ここでは、33歳の妻と2歳・0歳の子どもが遺された場合に、以下の金額が貰えるとの前提を置きます。
・47歳~49歳:月額14万円
・49歳~65歳:月額11万円
・65歳以降 :月額13万円
詳しい計算方法は、以下の記事をご参照ください。
万がいち自分が死んだときに遺族が路頭に迷わない様に、生命保険に入っている人も多いと思います。わたし自身、生命保険(収入保障保険)には必ず入っておくべきだと考えています。 ところが、必要以上に保険料を支払っている人が多い[…]
③ 企業年金
意外と見落とされがちですが、「企業年金」も大きなポイントです。
日系大手サラリーマンの強みとして「手厚い福利厚生」が叫ばれますが、まさに本領が発揮される場面と言っていいでしょう。
ただし、受給資格は会社によって異なりますので確認が必要です。
多くの場合は、45歳~50歳にならないと貰えるようになりません。
今回は33歳時点における保険額を考えていますので、ここでは0円としておきます。
④ その他
他に収入減がある方はそれも補足しましょう。
いわゆる「普通の」サラリーマン家庭では、収入源としては子ども手当ぐらいだと思います。
地方自治体によって額が異なりますが、おおむね子供当たり月額5千円 or 1万円が支給されるはずです。
(遺族の年収によります。)
ここでは、遺族の手取り給与を240万円/年としましたので、月額1万円として計算します。
さて、これで収入のめどが立ちました。
つづいて、金融資産について見ていきましょう。
2.金融資産について
金融資産として、普通のサラリーマン家庭では、①貯金と②投資の2つをお持ちだと思います。
①貯金は実額を把握しておけばよいですが、②投資については以下の理由から少し注意が必要です。
- 運用資産が暴落している可能性がある。
投資に詳しければ、アセットアロケーションを見直し、長期で回復していくのを待てばいいだけの話です。
しかし、遺族が投資のことを何もわかっていない、というケースも少なくないことでしょう。
保守的にみるのであれば、「運用資産が50%下落(3標準偏差)した時に現金化される」という前提を置いておくのが無難でしょう。
今回は①貯金500万円、②投資で1,000万円を運用しているケースを想定していますので、
保守的に 500万円+1,000万円×50%=1,000万円 の金融資産と換算します。
3.支出について
さて、続いて支出を見ていきます。
遺族の支出を考えるうえで考えるべきは、以下の4つの費用です。
- 生活費 |遺族の生活水準を落とさない
- 養育費 |子供に十分な教育を受けさせる
- 家賃 |少し狭い家への引っ越し
- 一時費用|死亡に伴い発生する費用
それぞれ順番に見ていきましょう。
① 生活費
夫婦間でよく話し合うべきポイントですが、我が家では「遺族の生活水準を下げないこと」を重視しています。
自分が死んだ後の話なので、自分にかかっていた費用(食費、携帯代、その他もろもろ)が無くなることは当然です。
しかし、それ以外の遺族の生活費については、今と同じ水準をキープしたいという思いを強く持っています。
遺された家族の生活を守ることが生命保険の意味ですので、個人的にはここは拘って良いポイントだと思います。
② 養育費
ここも夫婦間でしっかり議論しておくべきポイントです。
我が家は「遺された子どもから、経済的な理由で教育の機会を奪いたくない」と強く思っています。
大学卒業までの十分な資金を用意してあげたいと考えているので、養育費として1人当たり2,000万円を見込んでいます。
③ 家賃
家賃については、いま賃貸物件に住んでいるのであれば、少し狭い家に引っ越すことを検討してよいでしょう。
いまの家賃が例えば月15万円だとしたら、家賃を2割減らして月12万円ぐらいに落とすことは十分に可能です。
さらに、2人の子どもが独り立ちした後は、更に2割減らして月10万円程度の物件に引っ越すことも現実的です。
もちろん、持ち家の場合はこれらの費用はかかりませんので、保険料はその分安く見積もることができます。
④ 一時費用
大した額ではないものの、死亡に伴って発生する一時費用のことも考えておきましょう。
多めに見積もって、葬儀関係で50万円、引っ越し関係で50万円の合計100万円もあれば十分ですが、ここでは更に倍の200万円で保守的に見ておきます。
以上の①~④を勘案すると、以下のような支出イメージになります。
子ども2人が大学に進学している間の費用が高く、大学卒業後はがくっと下がります。
4.保険について
さて、これまで1収入、2金融資産、3費用についてそれぞれ見てきました。
最後に、これらを足し引きして保険の金額を決めていきます。
保険の金額を考える上でのポイントは以下の2点です。
- 貯金額がマイナスにならないこと
- 老後に十分な資産を貯められること。
1点目について、子どもが大学に通っている時期が最も費用がかさみます。
この時に貯金が底をつきないことが重要です。
2点目について、遺された配偶者の老後のことも考える必要があります。
最近では老後2,000万円問題などで関心も高い分野ではないでしょうか。
老後2,000万円とは、あくまで夫婦2人で必要な額ですが、ここではかなり保守的にみて配偶者1人でも2,000万円必要なものとして計算しています。
※この部分を、1,000万円~1,500万円程度に調整すれば、保険金額はさらに下げることができます。
収入保障保険は毎月決まった額を受け取れる保険ですので、見通しも立てやすいです。
エクセルに数字を入れると、月14万円の保障額があれば、上記の2つのポイントをいずれもクリアすることが分かります。
月14万円の保障額を受けるための保険料は
さて、それでは月14万円の保障額を受けるための保険料はいくらぐらいでしょうか。
詳しくは別の記事で書きますが、私がおすすめしているFWD収入保障保険では、月額5,000円程度です。
これまで、色んな前提をかなり保守的に寄せて検討してきました。
それでも、月額5,000円の保険料があれば、十分カバーできてしまうのです。
月3.5万円という保険料がいかに馬鹿げているか、お分かりいただけましたでしょうか。
保険を見直すタイミング
これまで、ライフプランによる生命保険金額のシミュレーションを見てきました。
このシミュレーションは1度作成すれば終わりというものではなく、状況に応じて見直しをする必要があります。
特に大きく見直す必要があるライフイベントが、人生には5つありますので、最後にその内容を見ていきましょう。
1.結婚した時
生命保険を初めて考えるのは、結婚した後でしょう。
配偶者のためにいくら遺したいのか、というところから始まります。
逆に言えば、独身の間は生命保険に入る必要は全くありません。
2.子どもが生まれた時
子どもが生まれると、収入(公的保障)や遺すべき金額などがガラリと変わります。
子どもが生まれるたびに、保険の金額を見直しましょう。
3.家を購入した時
マイホームを買うと、「団体信用生命保険」に入ることになります。
これは、自分が死亡した際にローンの返済義務がなくなるというもの。
裏を返せば、死んだ瞬間に家賃がかからなくなるということですので、保険で備えておくべき金額が大幅に減ることになります。
4.企業年金を受け取れるようになった時
日系大手日系の大手企業では、45歳~50歳ごろから企業の遺族年金の受給資格が発生するケースが多いです。
会社や職掌によって異なるものの、月額5万円~15万円は受け取れますので、人事や労働組合に確認しましょう。
企業年金が発生したタイミングで、保険の金額は大幅に減らすことが可能です。
5.子どもが独り立ちした時
子どもが大学や大学院を卒業した後は、子どものためのお金を残しておく必要はありません。
その分の保険はすっぱりカットしましょう。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
私は数字を扱う職業柄、色んなものを保守的に計算する癖があります。
しかし、それでも生命保険の保険料はたったの5,000円で済みます。
保険会社のセールストークに惑わされることなく、必要な保障額をしっかり見極めましょう。
また、色んな記事で口を酸っぱくして言っていますが、貯蓄型保険は絶対に入らないようにしましょう。
長年にわたって無駄なお金を吸い取られるだけです。
この記事が、皆さんの生活にゆとりをもたらす一助となれば幸いです。
突然ですが、この世の中には「情報弱者から過大な利益を取るビジネス」というのが横行しています。情報商材など、明らかにそれと分かるものもあれば、巧妙に隠されたものもあります。貯蓄型保険は、まさに「巧妙に隠された情弱向け商品」の典型です。[…]