資産運用系のブログには、ざっくりまとめると大体次のようなことが書かれています。
- 楽天証券かSBI証券で口座を開きましょう。
- S&P500か全世界株式に連動する投資信託(またはETF)に積立投資しましょう。
- 証券口座は、iDeCo → つみたてNISA → 課税口座の順に使いましょう。
- ただし、iDeCoは60歳まで引き出せないので、資金繰りに注意しましょう。
- iDeCoでは資金を自由に引き出せないことによる「流動性プレミアム」を追求する必要あり。
- 30年国債から見る流動性プレミアムは0.5%~1.5%程度。
- 30歳からiDeCoを活用する場合、利回りを▲0.5%~1.5%する必要あり。
流動性プレミアムとは
自由に使える現金や、自由に現金化できる資産には、それだけで価値があります。
「いつでも使える100万円」の方が、「10年後まで使えない100万円」よりも高い価値を持ちます。
「いつでも売れる株式」の方が、「必死で買主を探さなければならない株式」よりも高い価値を持ちます。
「いつでも引き出せる投資信託」の方が、「60歳まで引き出せない投資信託」よりも高い価値を持ちます。
- 急な資金が必要になったのに使えない。
- もっと利回りのいい投資先が見つかったのに投資できない。
- インフレに弱くなる。
これらの追加リスクを正当化するためには、当然追加のリターンを求める必要があります。
(そうでなければ、流動性のない資産に投資をする意味がありません。)
この追加リターンのことを「流動性プレミアム」と言います。
流動性プレミアムは何%?
流動性プレミアムは、長期になればなるほど高くなります。
30歳からiDeCoを始める場合、60歳までの30年間に渡って資金がロックされます。
それでは、30年間の流動性プレミアムは何%なのでしょうか。
ここでは、償還期間が30年の国債の利回りと、短期間(2年)の国債の利回りの差分として計算してみましょう。
(Bloombergで30年債のデータが拾えた国を記載しています。)
国によって幅があり、0.65%~1.3%という結果になりました。
これはあくまで一時点の数値であり、利回りは刻一刻と変化していきます。
実際に利用する時は、少し幅を見て0.5%~1.5%程度と考えておきましょう。
これ以外にも、「長期金利は短期金利の将来予測により決まる」とする純粋期待仮説や、「短期金利と長期金利は分断された市場で決定される」とする分断市場仮説などがあります。
流動性プレミアムを加味した利回りとは
例えばあなたが30歳で、iDeCoとつみたてNISAで同じ投資信託を購入していたとしましょう。
節税効果を加味したIRR(複利利回り)が、iDeCo4.5%に対し、つみたてNISAでは4.0%だったとします。
これに流動性プレミアム1%を加味するといくらになるでしょうか。
答えは非常にシンプルで、iDeCo3.5%(4.5%-1.0%)、つみたてNISA4.0%となります。
※数値はあくまで思考実験用の例示です。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
iDeCo以外にも、流動性プレミアムを見なければならない金融商品はたくさんあります。
定期預金、財形貯蓄、個人年金保険、学資保険などがその典型です。
これらに資金を投下する時は、▲0.5%~▲1.5%程度、利回りを差し引いて考えるようにしましょう。
こうすることで、「資金の利用が制限される」というリスクを定量化することができます。
この記事が、皆さんの資産形成の一助となれたのであれば光栄です。
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なお、途中で出てきたIRRについては、以下で解説していますので、是非合わせてお読みください。
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